AMP−3製作記
原 恒 夫
1 はじめに
AMP−2の好評に気を良くして、ポピュラーな球を使って、もう少しパワーの出るアンプを作りたくなりました。「ラジオ少年」のコンセプトから、シンプルな回路で、価格的にも教材として若い方々のお小遣いの範囲でというものを考えました。
2 使用部品と回路
出力管は、後々ラジオなどにも使い回しが出来るよう6AQ5(6005)を選びました。このようなラジオ用のMT管は、価格は安いメリットがありますが、あまり高いプレート電圧をかけらません。6AQ5は最高プレート電圧250V(6005の場合は、もう少し高い電圧がかけられるようです。)そして、低周波増幅とPK分割回路にには、おなじみの12AX7を使用しました。回路はシンプルなものです。250V以上をかけられないことから、少しでも高い電圧をプレートにかけようと、固定バイアス方式を採用しました。アンプ部は、サブシャーシー方式を採用しました。サブシャーシーにしておきますと、様々な改造がしやすいことです。サブシャーシー部分を取り変えることによって、9ピンの球、GT管など自由に変更が出来ます。また、実験のためにサブシャーシーにビスナットの穴をいくつあけても、外からは見えないため、改造派には良いと思います。
電源部は、回路が簡単なためプリント基板をつくりました。電源部をユニットにしておくと、これも使い回しが出来ます。バイアス電源には、半固定ボリュームをを付け、出力管を変更しても対応出来るようにしてあります。
3 製 作
電源ユニット、サブシャーシーを完全に組み立ててからシャーシーに取り付けます。次にシャーシーに入力ピン、出力ターミナル、電源コネクター、電源スイッチなどを取り付けます。最後に重いトランスを取り付けますが、トランスには傷がつかないようにビニールなどのカバーをかけておきます。
配線は、6Pのラグ板を4個使っています。アースは、1点アースにしますので、アース母線をどのように張ればよいか十分考えて下さい。回路がシンプルですが、プッシュプル回路のせいもあって、結構CR類が多く、私の場合はラグ板の端子は全部ふさがってしました。一応サブシャーシーの写真を載せて起きますが、部品の配置を参考にしていただければと思います。
シャーシーへのアースポイントは、入力ピン近くのトランス取り付けのビスにアースを取りました。
4 調 整
調整の前は、NFB回路を接続しないで行います。
調整は、
1 バイアス電圧の設定(−15Vに設定)
2 出力トランスの位相の確認
です。
電源を入れる前にバイアス調整用の47KΩのボリュウームを中央辺りに回しておきます。真空管を差し込んでいる場合は、なるべく手早くバイアス電圧を47kΩの半固定ボリュームを回して−15Vにセットします。−10V以下になったままにしておきますと、6AQ5に大きな電流が流れプレートが赤くなってきますので、注意が必要です。
念のため、4本の6AQ5のグリッドに−15Vがかかっているか1本毎にテスターで確認します。私の場合3本の6AQ5にはちゃんと−15Vがかかっているのに1本の6AQ5に−12Vしかかっていませんでした。そこで疑ったのが12AX7のプレートか6AQ5の第一グリッドに入っているカップリングコンデンサーの0.1μFです。テスターをあて、絶縁状態を調べて見ますがMΩで大丈夫のようです。しかし、このカップリングコンデンサー以外に原因は考えられず、思い切って別の0.1μFと取り替えてみました。するとグリッドの電圧は−15Vになりました。やはり0.1μFのコンデンサーがわずかにリークしていたのです。新品のコンデンサーでも安心できませんね。
バイアス電圧の設定が出来ましたら、出力トランスの位相を確認します。CDなどの入力を入れますと左右のスピーカーから音が出ます。右だけ、左だけから音が出るのであれば、出ないチャンネルは配線ミスが考えられます。再点検してミスを発見し修正します。
左右のチャンネルから音が正常に出ることを確認した後、NFB回路をつなぎます。
わずかに音量は下がりますが、音が正常に出れば、出力トランスの位相は合っています。しかし、発振したり、音が小さくひずんでいる場合はトランスの位相が合っていません。出力の8Ω赤と黒の線を入れ替える、または、出力トランスから6AQ5のプレートに行っている黄色と青の線をつなぎ変えます。
シャーシーをひっくり返して、半田付けやテスターで各部の電圧を測りますので、左右のチャンネルを間違えないようにします。勘違いしないようサブシャーシーに右とか左とか左表示しておくとよいでしょう。
念のためバイアス電圧以外の各真空管にかかっている電圧も調べてメモしておきましょう。
5 試 聴
6AQ5プッシュプルですから、片チャンネル7〜8Wは出ているでしょう。早速CDをかけてみます。特に特色のある音とはいえませんが、低域から高域まで素直な音が出ています。負帰還の調整などで「好みの音」に仕上げてはいかがでしょう。
6V6などに変更した場合、プレート電圧をもう少し上げることが出来ますので平滑回路の300Ωの抵抗を47Ω程度まで小さくすると300V近くを出すことが出来ますので、さらにパワーアップが期待できます。球を変えた場合、必ずバイアス電圧もその球にあったバイアス電圧に調整しましょう。